公社の賃貸ブログ

「フロール元住吉 × フロール横浜井土ヶ谷」スタッフ意見交換会&見学レポート~現場で生まれる「気づき」を共有し、よりよい住まいづくりへ

2025.12.18

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取り組み

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公社の賃貸住宅では、日々さまざまなスタッフが活動していますが、少し珍しいところでは、入居者の安心で豊かな暮らしを支えるため、コミュニティづくりに関わるスタッフがいる物件が2つあります。これらのスタッフの運営はパートナー企業が担っていますが、公社も企画段階から一緒に仕掛けをつくり、物件の特徴や地域性に合わせたコミュニティ形成の仕組みを共に考えています。

2020年1月に竣工した「フロール元住吉」(川崎市中原区)では、共用部の見守りや日常の相談ごとに対応する"守人(もりびと)"が入居者の暮らしを細やかにサポート。
2024年1月に竣工した「フロール横浜井土ヶ谷」(横浜市南区)では、地域と繋がる交流やコミュニティづくりを担う"いどばたスタッフ"が活動し、入居者同士のつながりを育んでいます。

そんな両物件のスタッフが11月某日、フロール元住吉に集い、見学会・意見交換会を開催。フロール元住吉からは"守人"3名、フロール横浜井土ヶ谷からは"いどばたスタッフ"5名、公社職員3名が参加。
ともに"入居者の暮らしとつながりを育てる"役割ですが、その背景や地域性、苦労や工夫はさまざま。互いの実践を共有し、運営パートナーと公社が協働しながら次の活動に活かすヒントを持ち帰るための貴重な時間となりました。

「フロール元住吉」を実際に見学

まずは、「フロール元住吉」の物件見学。"いどばたスタッフ"は初めての「フロール元住吉」。共用スペースの雰囲気、"守人"の動線、掲示物の見せ方など、現場ならではの"空気感"に触れる貴重な時間となりました。

「フロール元住吉」には、用途が異なる2つの入居者専用のシェアラウンジがあります。

【シェアラウンジ2】

入居者同士の集まりなど、"みんなで使う場所"として活用されている小部屋。月に30件ほどの予約利用があり、入居者間のコミュニケーションが活発なことが分かります。

入口には次の人が気持ちよく利用できるようにするためのチェックボードがありました。「貼り紙ばかりの注意喚起にはしたくない」という思いから、子ども達にもやわらかく伝えられる工夫が施されています。小さな試行錯誤が続けられています。

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【リビング シェアラウンジ1】

"第2のリビング"のように使われ、昼はテレワーク、午後はママ友のお喋り、夕方は子どもたちの遊びスペースに。この日も小学生がYouTubeを見て過ごしていました。入居者が安心してシェアラウンジを利用できるのは、"守人"の目が届きやすい場所にあり、ゆるやかな見守りが効いているから。「マンションの中に自宅以外でもう一つ、安心して過ごせる場所」になっているようです。

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【エントランスの掲示板】

大きな掲示板には、イベント情報、地域の催し、周辺のおすすめ店などがびっしり。掲示板の向かいには、"守人"スタッフのプロフィールも掲示。出身地や趣味などが書かれていて、入居者とのコミュニケーションのネタにもなっているそうです。

見学中も、小学生が帰り道に掲示板をのぞき込んでいました。こうした日常のワンシーンからも、住民と地域の距離の近さが感じられます。

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【中庭】

中庭では、"守人"と入居者が一緒に花やハーブを育てています。夏休みには、オクラの成長をみんなで見守り収穫まで行ったとのこと。夏場は大きなプールを出し、子どもたちが水遊びを楽しむ場所にもなります。中庭は、"暮らしを一緒につくる"場として活用されているようです。

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【防災備蓄倉庫】

備蓄倉庫には、3日間を想定した防災用品が整理整頓されて並んでいました。

「町内会でも防災訓練をやっているので、私たちも情報を掲示でお知らせしています。地域ともっと連携できたらいいですね。まだまだできることはあると思っています」

「フロール元住吉」内でも"防災を意識した地域を歩いて見て回るイベント"や"倉庫にある備蓄品の展示"など、入居者と一緒に防災意識を育む工夫も進められていました。

物件の外には、かまどベンチ、マンホールトイレ、井戸もあり、災害時の拠点としてもしっかり整備されています。また、電気自動車用のカーシェアからは災害時の電力供給も可能とのこと。日常と防災が自然につながる、"安心の仕組み"が随所に見られました。

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【地域と入居者の交流拠点「TONARINO.」】

「フロール元住吉」の1階にある「TONARINO.」。この日は休業日でしたが、地域の方も利用できるカフェ&レンタルスペースとして人気。レンタルボックスも設置され、住民と地域をつなぐ拠点になっています。

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コロナ禍で入居が始まったフロール元住吉

見学会のあとは意見交換会。まずは、"守人"の紹介。「フロール元住吉」はコロナ禍の最中に入居が始まった物件です。対面での交流が難しい時期だったため、「どうすれば入居者とコミュニケーションがとれるのか」"守人"も手探りの状態だったそうです。そこで考え出したのが、"もりびと通信"という紙のツールでした。

守人はもりびと通信を「入居者とつながるためのプラットフォーム」と位置付けています。"守人"の紹介、共用部の使い方、イベントレポートなどを載せ、入居者に手渡すように全戸に投函し入居者・新しく入居される方へ "暮らしの様子"をていねいにお届けしています。

入居者にとって"守人"が「話しかけていい存在だ」と自然に思えるよう、言葉だけでなく"紙"というやわらかい媒体で距離を縮めていきました。

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イベントはただ開くのではなく、"誰に届くか"を考える

「フロール元住吉」には、子育て世帯・共働き夫婦・高齢の方など、さまざまな入居者が暮らしています。イベントを企画する際にも、「誰に何が届くのか」を常に考えていると"守人"は話します。

「どの層に何が"刺さる"かを想像しながら、構成を工夫しています。」"イベント屋さん"としてではなく、"暮らしと人をつなぐためのイベント"を意識しているのが印象的でした。

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地域とつながらないと、入居者に情報は届けられない

"守人"が強調していたのが、地域との連携の大切さです。

たとえば地域のお祭り。神輿がどこを通るのか、いつ出発するのか、公式には情報がなかったそうです。守人は、以前から地域清掃に参加したり、町内会の方に話しかけたりして、少しずつ顔を覚えてもらいながら情報を得ていったといいます。

「入居者に地域の情報を提供するには、地域の方とつながっていないとできない。住民だけを見るのではなく、地域にも目を向ける必要があると実感しました。町内会や婦人会の方にも"あそこの人だよね"と認識されて、協力してもらえることも増えました。」

"守人"自身が外に出ていくことで、地域の人たちも"ここに新しい仲間が来た"と受け止めてくれたのだろうと思います。"守人"の役割は、「マンション内」と「地域」をゆるやかにつなぐハブ。その役割が、日常の安心感にもつながっているのだと気づかされます。

これらの積み重ねが、フロール元住吉のあたたかな空気と、入居者同士・地域とのつながりを支えているのだと感じました。

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"ほどよいご近所づきあい" フロール横浜井土ヶ谷の実践から

次は「フロール横浜井土ヶ谷」の"いどばたスタッフ"の紹介です。

名前の由来は、物件名「井土ヶ谷(いどがや)」と "井戸端会議" をかけたもの。
その名の通り、入居者同士をゆるやかにつなぎ、"ほどよいご近所づきあい"を育てる役割を担っています。

「フロール元住吉」の"守人"よりライトな位置づけで、週2回の午前中にシェアラウンジの有人管理をしています。「見守り」と「声かけ」を大切にしながら、入居者の暮らしに寄り添う存在です。

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物件オープン前から準備してきた「3つの目標」

フロール横浜井土ヶ谷の運営準備は、入居開始(2024年)の1年前、2023年からスタートしていました。スタッフは話し合いの中で、目指すべき姿として3つの目標を掲げています。

  1. ほどよい人づきあい
  2. コミュニティ防災
  3. 地域とのつながり

「ベッタリは苦手。でも完全に孤立するのは不安。その"あいだ"をつくるのが"いどばたスタッフ"の役目。」

多様な価値観の人が暮らすマンションだからこそ、"ちょうどよい距離感"を大切にしています。

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情報発信 × 居場所づくり

"いどばたスタッフ"の活動は、大きく分けて2つ。一つ目は「情報発信」。月1回の「いどばた通信」(掲示+全戸配布)とLINEのオープンチャット。LINEの利用が苦手な高齢者もいるけれど、まずは使える人から情報が人づてに伝わればと思い運営しています。

二つ目は「居場所づくり」。シェアラウンジでのイベントや、通りがかった人にも声がけできる"開かれた雰囲気"づくりを目指しています。

スタッフにはそれぞれ得意分野があるため、その特性を活かして、「ミシンの日」「図書の日」「健康体操の日」などの"定期イベント"を企画。イベントを通じて、入居者が顔を合わせる小さなきっかけを生み出しています。

「フロール横浜井土ヶ谷」は川のそばという立地もあり、コミュニティ防災に力を入れています。

「このイベントは防災につながります、とあえて明示しています。防災を"特別なこと"ではなく日常の中に置きたいんです。」ただ備えるのではなく、"つながりながら備える"という姿勢がとても印象的でした。

ただ、フルコミットのイベントは苦手、という方も多いので、パンや野菜販売など"ちょっと参加できる"ものも用意して、まずは顔が見える関係をつくれるようにしていく。"参加しやすい小さな入口"を用意することが「フロール横浜井土ヶ谷」らしいコミュニティの第一歩になっているようです。

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入居者の"好き"や"得意"を活かす新プロジェクト

2025年から「いどばたラウンジ活性化プロジェクト」が始動。入居者が自らサロンや講座を開くアイデアも出始め、"やりたい人を応援しながら、無理はしない"仕組みづくりを進めています。

「やりたい人の背中を押す。でも全部は抱えすぎない。」

そんな"ほどよい関わり方"を探りながら進めているのが印象的でした。

「フロール横浜井土ヶ谷」は運営2年目。"いどばたスタッフ"が直面しているのは、「どこまで入居者や地域とつながるか」という悩みです。日々トライアンドエラーを重ねているとのことでした。

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より良い住環境づくりに向けて

「住む人や環境などが違っても、根っこは同じ。一緒に今後もお互いに相談できる関係がつくれるといいですね。」とこの日の意見交換会は終わりました。

今回の意見交換会と見学会を通して、拠点ごとに積み重ねてきた工夫や経験が、互いにとって新しいヒントになることを改めて実感しました。

拠点は違っても、「住民の暮らしを支え、安心を育てるコミュニティをつくりたい」という思いは共通。こうした横のつながりが、日々の交流の質を高め、「ここに住んでよかった」という実感につながっていくと感じました。

「入居者や地域の方との距離感をどう取るかなど、場所は違えど課題は同じだなと感じました。何をやるにもその地域や物件や入居者のことを知った上で考えていかなくてはと思いました」

「公社では手が届かない細やかなコミュニティ形成の部分を担っていただいていると改めて実感しました」と今年から担当になった職員から。実際の声を聞けて勉強になったようです。

今後もスタッフ同士の学び合いを続けながら、入居者の安心と快適な暮らしを支える取り組みをより深めていきたいと思います。

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守人さんといどばたスタッフより今回の意見交換会&見学会について、感想をいただきました。

守人

今回の交流会では、"きっかけづくりで終わらせない仕組みづくり"という、いどばたスタッフと我々が持つ共通の理念を再認識することができました。

例えば、いどばたスタッフからオープンチャットの活用方法を共有いただいた際、フロール元住吉でもチャットを立ち上げたところ、守人と住民・住民同士の距離感がぐっと縮まり、日常的なコミュニケーションが増えました。

他にもいどばたスタッフの皆さんは、文庫の選書や、ミシン教室など、住民のニーズに寄り添い、作ったつながりのタネをどう育てるか考え、企画に展開していることが印象的でした。住んでいる方の年齢層や世帯数は各拠点によって異なりますが、皆さまの工夫から様々な学びを得ることができました。

今回の気づきを、元住吉での企画づくりや日々のコミュニケーションにも活かします。そして、次回は私たちが井土ヶ谷の拠点へ伺う機会をいただき、実践的な学び合いを継続できれば嬉しいです。

いどばたスタッフ

いどばたスタッフとして活動が始まる前の企画段階から、フロール元住吉の守人さんのことはシェアラウンジの有人管理、入居者とのコミュニティづくりの大先輩として、伺っていました。今回、実際に現場を見学させていただきながら、入居者の方々と取り組んでいること、作ってきたものなどを見せていただいたことで、より理解が深まりました。

コミュニケーションの取り方や「防災」の意識付けなど、フロール井土ヶ谷でも実践したいと思う新たな気づきもたくさん得ることができました。また、情報の届け方などについて同じように試行錯誤しているというのもわかり、今後も意見交換ができる関係性を続けていけたら心強いと思いました。

これからも、フロール井土ヶ谷のシェアラウンジを中心に関わる人たちと顔を合わせて、じっくり対話を重ねることで、ゆるやかで穏やかなつながりを感じられる心地よい暮らしのお手伝いをしていきたいと思います。


今回の公社の賃貸

フロール元住吉

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【団地紹介】人と地域をつなぐ賃貸住宅「フロール元住吉」

【物件概要】●所在地/川崎市中原区西加瀬5●規模/2棟153戸●専有面積/32.24~66.04㎡●間取り/1K~3LDK●竣工/令和2年1月●アクセス/東急東横線・目黒線「元住吉」下車、徒歩8分

関連WEBサイト

春の訪れと新しい出会いを!フロール元住吉シェアラウンジお花見イベントレポート(2025.06.03)
https://www.kousha-chintai.com/blog/landscape/fleur-motosumiyoshi-ohanami-202504.php
心も体もハッピーに!音楽とケーキで祝うフロール元住吉 5周年感謝コンサート(2025.05.28)
https://www.kousha-chintai.com/blog/efforts/fleur-motosumiyoshi-5th-anniversary.php


フロール横浜井土ヶ谷

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【団地紹介】ずっと。もっと。この街と。「フロール横浜井土ヶ谷」
【物件概要】●所在地/横浜市南区井土ケ谷中町1番10●規模/130戸●専有面積/34.41㎡~65.10㎡●間取り/1R~3LDK●竣工/令和6年1月●アクセス/京急本線「井土ヶ谷」駅下車、徒歩約9分、横浜市営地下鉄ブルーライン「蒔田」駅下車、徒歩約9分

関連WEBサイト

音楽が紡ぐ新旧住民の輪♪ フロール横浜井土ヶ谷クリスマスコンサート(2025.03.04)
https://www.kousha-chintai.com/blog/efforts/post-71.php
YOKOHAMA PROJECT第2弾!新しい公社の賃貸「フロール横浜井土ヶ谷」を取材しました!(2024.02.20)
https://www.kousha-chintai.com/blog/efforts/yokohama-project2.php

石井(総務広報課) 公社の事業や取組みなど、取材しレポートしてきます! 公社のホームページやFBもぜひご覧ください! 公社のホームページ https://www.kanagawa-jk.or.jp/ FB https://www.facebook.com/kanagawajk/